読書日記・2作目~「慟哭」~
こんにちは、こんばんは。kanaudattyです。
今回は読書日記の2作目。ジャンルは「推理サスペンス」です。
ご紹介する作品は、貫井徳郎の「慟哭」。
この作品はどうやらデビュー作だったようで、出版年は1993年。
僕こと筆者がこの本と出会ったのは5年前でしたが、当時の興奮を思い出しついこの数日で再び読み切ってしまいました。
それでは冗長な序文はカットして早速、内容紹介&書評の方に移らせていただきます。
※尚、この記事は多分に私見を含んだものになります。個人的な意見、考えで書いているのでそこは御容赦を。
目次
内容紹介
連続する幼女誘拐事件の捜査が難航し、窮地に立たされる捜査一課長。若手キャリアの課長を巡って警察内部に不協和音が生じ、マスコミは彼の私生活をすっぱ抜く。こうした状況にあって、事態は新しい局面を迎えるが……。人は耐えがたい悲しみに慟哭する――新興宗教や現代の家族愛を題材に内奥の痛切な叫びを描破した、鮮烈デビュー作。
ー本書あらすじより
新興宗教というテーマについて
日本を震撼させた地下鉄サリン事件が起きたのは1995年。つまり1990年代前半というのは、新興宗教ラッシュで世間の若者たちが沸き立った1980年代バブル期の潮流を全面で受ける時代相でした。
前文で紹介した通り、「慟哭」の出版年は1993年。今作がそのメインテーマの一つに「新興宗教」を据えていることは極めて同時代的だと言えるでしょう。
それでは、書評の方に移らせていただきます。
書評
①内容
構成の観点から見た本書は、一種芸術的な美しさを持った作品です。
2人の登場人物の視点が切り替わり続ける後、読者が膨らませた謎や読みをラストで盛大にひっぱたく、紛うことなきカタルシス
警察組織やマスコミ、家族、件の新興宗教についての描写は徹底的に細部まで書き込まれていて、だからこそ、よりリアリティーを持って作品が読者に迫ってくるのでしょう。
筆者が気づいたポイントとしては、「無駄な情報の少なさ」
基本三人称の本作品。
無駄な追憶や、長ったらしい心情説明をそぎ落とし、1文で伝えるべき情報は伝える。
これは執筆活動を行った経験のある方なら分かってくれると思うのですが、とてつもない難関です。
一人よがりでもいけないが、情報はコンパクトに。この作業をどのレベルで行えるかで、自然と作家としての器量が見て取れます。是非今後の読書の着眼ポイントにしてみてください。
②文章
作品を通して比較的無機質な三人称を用いることで、シーンの印象が頭に染み込んでくるような感覚で読み通せます。
その無機質な文体と現実味あふれる事件描写の数々は、クライマックスで読者を最もインプレッシブルな状態へと誘うことでしょう。
そこはかとなく古めかしい感じがしないでもない、そんな文章ですが読みにくさはゼロ
ストレスフリーで読めると思います。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
まだまだ拙い書評ですが、少しでも多くの方が興味を持ってくれたら嬉しい、そんな思いで書きました。多少なりとも皆様の読書生活の糧になれば幸いです。
それでは、また。